コロナレポート[他のタンパク][医薬品開発][免疫応答]

(3)他のタンパク

★SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRpまたはNSp12)は、ウイルスのポリメラーゼに共通しているポリメラーゼ中心部の構造を保っているが、N末端に、新たに同定されたβ螺旋領域を持っている 。[RNA依存性RNAポリメラーゼは、コロナウイルスの機械的複製・転写の中心的な要素であり、レムデシビルの主要標的である。]

◎上海の研究者らは、COVID19ウイルスの複製・伝搬に必須のプロテアーゼであるM酵素の結晶構造を同定・解析し、M酵素を標的とする薬剤スクリーニング・システムを開発した。これを用いて10000以上の既存薬、薬剤候補、薬学的活性物質等をM酵素阻害剤として検査した。6剤の候補が見つかり、特に脳血管攣縮抑制薬として臨床開発が行われたエブセレンが良好な効果を示した 。

◎ドイツの研究者らは、SARS-Co-V-2のMタンパクをα-ケトアミド阻害剤との結合体の形で構造解析した。この構造を基に、SARS-CoV-2のMタンパクに対する最も期待できる阻害剤の候補物質を開発した。薬理動態解析によって、吸入投与が、肺の明らかな反応性と適性があることが解った 。

◎中国の研究者らは、良好な阻害活性を持つMタンパクを標的とする2つの候補物質(11a、11b)を開発した。Mタンパクと11a、11bの複合体の結晶構造では、11aと11bのアルデヒド群がMタンパクのCys145と共有結合していた。両方ともin vivoでは良好な薬剤動態を示し、11aは毒性も低かった 。

(4)医薬品開発

臨床用の組み替え型水溶性ACE2は、SARS-CoV-2の細胞への感染を抑制し、SARS-CoV-2の細胞のヒト人工血管とヒト人工腎オルガノイドへの感染を阻止した 。細胞の侵入経路の大本であるACE2の組み換えとは画期的で面白いですが、そもそも全ての細胞でそんなことができるのか。ちょっと途方もつかない。

◯RNAアナログであるβ-D-N4-hydroxycytidineは、SARS-CoV-2を含む多種のコロナウイルスに対する抗ウイルス活性を示し、レムデシビルを含む他の核酸アナログへの耐性変異を生じているコロナウイルスへの強い効果を持つ。EIDD-2801(β-D-N4-hydroxycytidine-5′-isopropyl ester)の経口投与は、SARS-CoVとMERS-CoVに感染したマウスにおいて、肺機能を改善し、ウイルス量と体重低下を減少させた。MERS-CoVのin Vitro 及びin vivoにおける減少は、ウイルス側の変異頻度と相関しており、致死的変異の機序が支持された 。[本論文は査読前のpreprintである。未だ基礎研究であるが、レムデシビル耐性ウイルスへの効果が期待される。]レムデシビル、大変期待していますが、「これだけですっと治ってしまう」特効薬とまではいかないようで、そうすると耐性ウイルスの問題まで出てくるんですね。

◯レムデシビルとクロロキンのin vitroの研究では、レムデシビルはSARS-CoV-2の細胞内侵入後に機能し、ヒトVero E6細胞に感染したSARS-CoV-2の90%阻止は1.76 μMで、実験動物の生体内で到達する濃度と同様だった。また、クロロキンはSARS-CoV-2の細胞内侵入時と侵入後に機能し、ヒトVero E6細胞に感染したSARS-CoV-2の90%阻止は6.90 μMで、臨床上で到達している濃度だった 。

◯マカク猿を使ってSARS-CoV-2に対するレムデシビルの効果を調べた動物実験では、レムデシビル投与群(6匹)は、対照群(6匹)と反対に、呼吸器疾患の症状が無く、画像上での肺浸潤が少なかった。気管支肺の洗浄液のウイルス力価は、レムデシビル投与後12時間後から有意に減少した。7日目の剖検において、レムデシビル投与群の肺のウイルス量は、対照群より有意に低く、肺の損傷が明らかに減っていた 。[本論文は査読前のpreprintである。][レムデシビルの臨床研究では、ウイルス量を測定していないため、動物実験ではあるが、ウイルス量の減少効果を示した意義がある。]

◯パリの研究者は、COVID-19で抑制不能になった炎症を抑えるため、スクワレンを基本とした多剤ナノ粒子を作成した。ナノ粒子は内因性の脂質であるスクワレンを、内因性の免疫調節機能を持つアデノシンと結合させることによって作られていて、自然な抗酸作用を持つαトコフェロールをカプセル封入している。これによって、薬剤が高用量で、生体適合的な多剤ナノ粒子となっている。急性炎症部位での血管内皮細胞の防御機能の障害を利用して、多剤用ナノ粒子は、薬効成分を対象部位を標的として運搬でき、動物モデルの検討で、有意な生存率の延長を示した。アデノシンと抗酸剤の選択的運搬は、少ない副作用で急性炎症を治療する新しいアプローチである 。

(ワクチン開発)

◯北京のシノベック・バイオテック社は、SARS-CoV-2に特異的な中和抗体をマウス、ラット、ヒト以外の霊長類で誘導するSARS-CoV-2の不活性化ワクチンを探索的に開発した。産生された抗体は、10の代表的なSARS-CoV-2の系統を中和できた。3μgと 6μgの2つの異なる用量で、抗体依存性感染増強を起こすことなく、マカク猿をSARS-CoV-2から、それぞれ部分的に、完全に守った。マカク猿の症状や血液・生化学データ、組織学的分析による評価からは安全性が示された 。[本論文は査読前のpreprintである。]

(5)免疫応答

◎SARS-CoV-2は、Spikeタンパクを通じた膜融合によってTリンパ球に感染する 。[多くの重症COVID19患者でT細胞の減少し、減少の程度が大きい程、転帰が厳しいことが報告されている。本論文の研究者は、SARS-CoV-2は、T細胞に感染し、T細胞の機能を破壊していると推測している。]免疫細胞自体に感染するとは、厄介な性質。

最後に、引用者より・・・世界中の論文を紹介して頂いて、笑われるだろうけど、小さな世界[It’s a Small World]の歌が頭から離れなくなりました。    世界は丸い、ただ一つ。ウイルスとの戦い、あと少し、頑張ろう!!

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神奈川県藤沢市で「藤沢在宅クリニック」を開いています。 患者さんのお宅や施設に訪問して診療する、在宅医です。 YouTubeで健康チャンネルを不定期配信しています。 「在宅医が語る!健康チャンネル」 https://www.youtube.com/channel/UC9YxLfSunPnVClEMW04Jeuw ☆著作「在宅医の告白~多死社会のリアル~」(2018.2.26 幻冬舎MC)