コロナレポート[治療薬][血清療法][感染状況]

(2)治療薬

A.カレトラ

☆☆☆カレトラ(ロピナビル/リトナビル)のCOVID-19の中等症以上(SaO2≦94%またはPaO2/FiO2≦300mgHg以下)の入院患者を対象とする無作為非盲検比較試験(各群100人)において、カレトラ群(99例)は、28日目の死亡率とウイルスRNAの経時的検出率に関して、何れも対照群(100例)と差が無かった。[治療企画解析において、カレトラ群の臨床症状改善までの期間の中央値は、対照群に比較して1日以下の短縮であった。カレトラ群の方が消化器系の副作用が多かったが、重篤な副作用は対照群の方が多かった。カレトラ群の13人(13.8%)で副作用のために治療を早期に中止した。ただ、本研究では、①薬剤投与群の方が回復までの期間がやや早く、②発症後12日以内に薬剤を投与した患者の方が、それ以後に投与した患者より、対照群と比較した場合の死亡率の改善幅が大きく、③薬剤投与群の方が、腎不全や2次感染等のCOVID19の合併症や呼吸補助を要する呼吸不全となった患者数が少なかった。][日本でのカレトラの臨床研究(治験)は、軽症例または発症後早期の患者を対象としたり、他剤との併用を試みるべきと考えられる。]

☆カレトラとアルビドール(インフルエンザ薬)の軽症から中等症のCOVID-19の患者に対する探索的無作為比較試験では、カレトラ群(34例)、アルビドール群(35例)、抗ウイルス薬を用いない対照群(17例)との間で、主要評価項目であるSARS-CoV-2陰性化までの期間と、7日目と14日目における陰性化率、及び副次的評価項目である7日目と14日目における解熱、咳の緩和、または胸部CT上の改善の割合の、何れにおいても、各群の間に有意な差は認められなかった。[7日目において、カレトラ群で8人(23.5%)、アルビドール群で3人(8.6%)、対照群で2人(11.8%)が重症化した。カレトラ群で12人(35.3%)、アルビドール群で5人(14.3%)に副作用を認めた。]本論文は査読前のpreprintである。]今のところカレトラは効果がなさそうとの事。

B.レムデシビル

☆☆レムデシビルの国際共同観察研究(61例)では、COVID-19の中等症以上の患者の68%(36/53)で改善が認められ、特に、人工呼吸器を57%(17/30)の患者で外すことができ、ECMOを75%(3/4)の患者で外すことができた。臨床的改善の頻度は、人工呼吸器装着患者では装着患者より少なく、70歳以上では70歳未満より少なかった。60%(32/53)の患者で、肝酵素上昇、下痢、発疹、腎障害、低血圧などの副作用が認められた。重篤な副作用は23%(12/53)で認められたが、人工呼吸器装着患者で多かった。[レムデシビルは、4月20日現在、日本を含む国際共同治験実施中。4月23日のBBCの報道では、誤ってWHOのリストに掲載された中国の研究の論文では、効果が認められなかったという

特に重症の方で効果があるというこで、とても期待しています!そして4月29日にNIHから出た報告、1063人の患者さんで治癒が31%早くなり致死率が低くなるというデータ、レムデシビル、すごい!!米国と、日本でも緊急承認になりそうです。希望の光!

C.アビガン

☆☆アビガン(ファビピラビル)(35例)とカレトラ(45例)の非盲検比較試験(共にインターフェロンαの吸入を併用)では、アビガンが、ウイルス排除までの期間(中央値:4日対11日)、胸部CT所見の改善率(91.43%対62.22%)でカレトラよりも有意に良好だった。更に、アビガンは、カレトラより副作用が有意(4対25)に少なかった。[報道によると、論文取り下げ(未確認)。理由は不明]日本の富士フイルムのお薬、とても期待しています!

☆☆アビガン(116例)とアルビドール(120例)の多施設非盲検無作為比較試験では、主要評価項目である投与7日目の回復率に差が認められなかったが、アビガン群では、2次評価項目である発熱と咳の改善までの期間が、有意に短かった。酸素と非侵襲的換気療法の使用率には差が無かった。アビガン群に最も頻繁に認められた有害事象は、尿酸値の上昇だった(16/116; OR: 5.52)。[本論文は査読前のpreprintである。事後的解析では、中等症例では、アビガンの7日目の回復率が有意に良好だったが、中等症・重症の混合例では、差は無かった。]

D.クロロキン

☆ブラジルにおけるクロロキンの2つの用量(高用量:600mg×2/日×10日or 全用量12g、低用量:低用量:450mg×1/日(初日のみ2回)×5日or 全用量2.7g)による無作為二重盲検第Ⅱb相試験では、13日目までの死亡率は高用量群で39%(16/41)で、低用量群で15%(6/40)だった。QT時間>500msが高容量群では18.9%(7/37)で、低用量群の11.1%(4/36)より多かった。検体採取を行った27例では、4日目でウイルス排除を認めたのは22%(6例)だけだった。[安全性の問題から高容量は勧められない。なお、全例に初日からアジスロマイシン(500mg×1/日×5日)、また、インフルエンザが疑われる場合には、タミフル (75 mg ×1/日×5日)が併用されている。]当初期待されていた抗マラリア薬クロロキンですが、この研究では高容量群の死亡率が4割と高すぎます。また抗生物質と抗インフルエンザ薬の併用をしているため効果が分かりにくい。

◎フランスでの36人の患者に対する非盲検比較試験では(ヒドロキシクロロキン600㎎/日投与群20例、対照群16例)、6日目のウイルス消失が治療群において有意に多かった(70%対12.5%)。アジスロマイシンを併用した6人では100%で、ヒドロキシクロロキン単独の57%(8/14)より高かった。こちらではよい結果が出ています。

◎中国での30人の患者に対するヒドロキシクロロキン(400㎎/日)の対照群との探索的比較試験では、7日目における咽頭拭い液のウイルスRNAの消失率は、治療群86.7%(13)、対照群93.3%(14)で差が無かった。入院後ウイルス消失までの期間の中央値は、治療群4日(1-9)、対照群2日(1-4)で差が無く、また、入院後体温正常化までの期間の中央値も、治療群1日(1-2)、対照群1日(1-3)で同程度だった。画像上の進行が治療群33.3%(5)、対照群46.7%(7)で認められたが、全例、その後の検査では改善した。治療群で26.7%(4)、対照群で20.0%(3)で下痢や肝機能障害が認められた。この研究でもクロロキンには有意な有効性がでていません。

E.アクテムラ

◯アクテムラ(トシリツマブ)のCOVID-19 に対する効果に関する諸研究のレヴューでは、重症例のIL-6値では非重症例より2.9倍高く(6研究、1302症例)、1研究で、重症例において、アクテムラにより酸素の必要の低減、画像上の異常所見の改善、臨床的改善が認められ、副作用や死亡は認められなかった。[ロッシュ社が第Ⅲ相試験を予定本論文は査読前のpreprintである。]

◯中国の21人のCOVID-19重症(17)・危篤(4)患者に、中国の治療プロトコル(6th interim edition)であるロピナヴィル、メチルプレドニゾロン、その他の対症療法薬、酸素吸入を含む標準治療に、アクテムラ1回投与(400mg)が追加された。アクテムラ投与後、数日以内に全症例で体温が正常化し、末梢血酸素飽和度を含む臨床症状も大幅に改善された。酸素療法を実施していた20人の患者の15人(75%)で酸素投与量を減らすことができ、1人で酸素投与が不要になった。CT所見では19人(90.5%)の患者で肺の不透明性が改善し、末梢血リンパ球値は、治療前に85%(17/20)で減少していたが、治療後5日目に患者の52.6%(10/19)が正常化した。CRP上昇は84.2%1(16/19)で有意に減少し、明かな副作用は認められなかった。2人の重篤な患者を含む19人(90.5%)の患者はアクテムラ投与後平均13.5日で退院し、残り2名も回復している。

羽田敦子訳.重症COVID19患者に対するトシリズマブの効果.日本感染症学会ホームページ(4月20日公開)[重症:呼吸数≧30/分、SaO2≦93%(室内気)、PaO2/FiO2<300、危篤:人工呼吸器を要する呼吸不全、ショック、他の臓器不全と組み合わせてICUに入院する必要がある場合] [両群ともceftriaxoneとazithromycinを併用している。]セフトリアキソンとアジスロマイシンはいずれも抗生物質=細菌を殺すお薬です。いずれにせよ、アクテムラ、とても期待できますね!

F.日本での症例報告

◯日本感染症学会のホームページ[では、オルベスコ、アビガンの効果に肯定的な報告が少なくない。[日本感染症学会のホームページには、4月29日現在、SARS-CoV-2陽性無症状者を含む69報305例の症例報告がある。使用薬としては、確認出来る範囲で、カレトラ(48例)、アビガン(ファビピラビル)(40例)、オルベスコ(シクレソニド)(27例)、ソルメドロール(メチルプレドニゾロン)(15例)、プラケニル(ヒドロキシクロロキン)(10例)、タミフル(オセルタミビル)(9例)の順で使用されている。3月下旬までの報告ではカレトラの使用が多く、3月中旬からの報告でオルベスコ、4月初旬からの報告でアビガンの使用が多くなっている。現在、アビガンは、日本・海外で臨床研究・治験が進行中。オルベスコも日本で観察研究が進行中。プラニケルは海外で治験が進行中]アビガンとオルベスコ、実際に日本人の患者さんで良い効果が出てほしいです!

G.高用量免疫グロブリン

◯重症のCOVID-19患者3名に対し、免疫グロブリン製剤の静脈投与25g/日×5日(1名はソルメドロール併用)を行ったところ、3名と翌日までに解熱し、3日以内に臨床症状が改善していき、ウイルスが消退して退院したと報告されている。これはこれで喜ばしい結果だと思いますが、個人的にはこういうところから見ても、低タンパク状態(もともと低タンパクだったり、病状の進行とともに進行したり。高齢者ではしばしば低い)をなるべく是正する療法が広まってほしいです。なぜなら、免疫グロブリンは、「もともと人体の中にある免疫タンパク」だからです。病院にもっと栄養療法を!

(3)血清療法

抗ウイルス薬とソルコーテフの投与を受け、人工呼吸で管理されていたCOVID-19の危篤状態の5人の患者に対して回復期血清(SARS-CoV-2に対する特異的IgG抗体の抗体価1:1000以上、中和抗体価40以上)400mlを投与したケースシリーズでは、4人の患者で投与後3日以内に体温が正常化し、SOFAスコアが減少し、12日以内にPaO2/FiO2が増加し(投与前172-276  → 投与後284-366)、12日以内にウイルスは陰性化した。投与後12日の時点で4人の患者がARDSを脱し、2週間以内に3人が人工呼吸器管理が不要になった。5人の患者のうち、3人は退院し、2人は投与後37日の時点で安定状態にある。

◯抗ウイルス剤の投与を受けているCOVID-19のPCR検査確定例10例に対する回復期血清200mL(中和抗体価1:640以上)の探索的前向き試験では、5例で回復期血清投与後速やかに中和抗体価が1:640となり、他の4例では1:640の高い中和抗体価が維持された(1例はデータ無し)。投与後3日以内に、臨床症状の著明な改善とSaO2の上昇が認められた。リンパ球増加(0.65×10/L → 0.76×10/L)、CRP減少(55.98 mg/L → 18.13 mg/L)を含む幾つかの指標が、投与後に投与前に比較して改善した。画像診断では、7日以内に、様々な程度の肺陰影の縮小を認めた。投与前にウイルス血症だった7例ではウイルスは認められなくなった。重篤な副作用は認められなかった。本論文は査読前のpreprintである。]血清療法、昔からありますが、個人的にはとても期待しています。ただ、一人の回復者の血清から何人分の血清がとれるかという基本的なことを私が知らないため、もし十分に手に入るならば、です。

(4)感染状況

☆☆☆アイスランドのCOVID-19高リスク者(有症状、最近の高リスク国への旅行、感染者との接触)9199人に対する検査(1月31日から3月16日)では、陽性者の43%は無症状で、10歳未満(6.7%)の方が10歳以上(13.7%)より陽性率が高かった。一方、PCR検査によるCOVID-19の無症候住民のスクリーニング検査(3月16日~4月4日に約13000人の検体採取)では、0.6%0.8%が陽性だった。10歳未満の約600人の検査では、陽性者はゼロだった。[人口や人口密度が大きく違うので、日本と直接比較することは難しい。10歳未満の無症候住民に陽性者がゼロだったことは重要と考えられる。児童の感染率は他の研究でもほぼ一致して認められており、少なくとも感染者数の少ない地域では、小学校の一斉休校の解除が容認されると考えられる。][日本での無症候感染者数の推計に敷衍するには、感染率と検査実施率の違いを考慮する必要がある。ただ、両者の違いにかかわらず、死亡者は医療機関でカウントされるはずなので、人口当たりのCOVID19による死亡者数を指標とすると、3月後半から4月初めのアイスランドの感染率は4月20日の日本の12~25倍程度の感染率と計算される。そうすると、日本の場合、4月20日時点で、0.024%~0.067%(30,2400人~88,200人程度、感染確認者の3倍~8倍程度)の無症候住民が陽性であると計算される。]小児は、やはりウイルスを運ぶ媒介としては、一般に思われているよりあり得るということ。

☆New Yorkのコロンビア大学病院等に入院した215人の妊婦のスクリーニング検査で、入院時に症状のあった4人(1.9%)、無症状の29人(13.5%)がSARS-CoV0-2陽性だった(すなわち、SARS-CoV0-2陽性者の87.9%(29/33)は無症状)。[SARS-CoV0-2は分娩に関して問題は報告されていない。(米国での新生児の無事も報告されている)高い無症状陽性率は、流行地域であることを反映していると考えられるが、偽陰性が在ることを考慮すると、実際の流行地域の無症状感染率は非常に高いと考えられる。]無症状感染者が、病院入院中の方で多いという事は近日かなり言われています。もしかしたら、入院していない人でもウイルスを持っているのかもしれない。

☆広州市の94人のCOVID-19患者の検討では、他人への感染性は発症の2~3日前から始まり、発症前0.7日目にピークとなると考えられた。他人への感染の約44%は、無症状の期間に起こっていると計算された。[「発熱後4日」を要件とする日本の基準では、感染の抑制が困難と考えられる。]発症1日前が一番感染性が強い、なんて厄介なウイルス。

◎看護施設での施設内感染の報告では、感染者の半数以上が検査時無症状で、これら無症状感染者が施設内感染を広めたと考えられた。

◎文献症例から、一時的感染者(infecters)と二次的感染者(infectees)の発症日が正確に確認できる18例を抽出して、発症時期の間隔(serial interval)を解析した研究では、serial intervalは4.0日(95CI:3.1-4.9)、最も信頼できるデータに限定すれば、4.6日(95CI:3.5-5.9)と計算された。[潜伏期間に近く、かなりの割合の二次的感染が一時的感染者の発症前に起こっていると考えられる。]だからこそ手洗い、マスク、換気が必要なんですね

☆4月3日・4日に、サンタ・クララ・カウンティの3330人の住民(住所、性別、人種で調整してFacebookで募集)の抗体を検査したスタンフォード大学の研究では、抗体の非補正保有率は1.5%(95%CI: 1.11-1.97)で、人口で補正した保有率は2.81% (95CI 2.24-3.37)だった。検査の性能を、製造者のデータとスタンフォードでの37の陽性及び30の陰性コントロールの検査結果で補正したところ、保有率は2.49% (95CI 1.80-3.17)から4.16% (2.58-5.70)と見積もられた。こえらは、4月上旬のサンタ・クララ・カウンティで 48,000 ~81,000人が感染していたことを示し、報告例の5085倍だった。[本論文は査読前のpreprintである。]数%は市中に感染者がいる可能性がある!ただしアメリカカリフォルニア州という、かなり蔓延した州の話、勿論イコール日本の話、ではありません。

       (続く)

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神奈川県藤沢市で「藤沢在宅クリニック」を開いています。 患者さんのお宅や施設に訪問して診療する、在宅医です。 YouTubeで健康チャンネルを不定期配信しています。 「在宅医が語る!健康チャンネル」 https://www.youtube.com/channel/UC9YxLfSunPnVClEMW04Jeuw ☆著作「在宅医の告白~多死社会のリアル~」(2018.2.26 幻冬舎MC)