コロナレポート[医療従事者][疫学]

(7)医療従事者

◎2月24日時点で、中国の77262人のCOVID19感染者の内、3387人(4.4%)が医療従事者であった。その内、4月3日時点で、23人の死亡が報告されている。平均年齢55歳(29歳~72歳)、男性17名、女性6名。13人が内科医、8人が外科医、1人が心電図技師、1人が看護師。COVID19治療の特命を受けた呼吸器専門医は2人だけだった。3月31日時点で、他地域から湖北省に来た42600人の医療従事者にCOVID19の感染は報告されていない。十分な注意と防護により、医療従事者を感染から守ることが出来ると考えられる 。呼吸器専門医以外に意外に多いことに注意。常にウイルスは潜んでいる前提で業務をしないといけない。(心身の疲労はかさんでいく)

☆1月29日から2月3日、中国の34病院の1257人の医療従事(64.7%(813)が26~40歳;76.7%(964)が女性;60.8%(764)が看護師;39.2%(493)が内科医;60.5%(760)が武漢の病院の医療従事者;41.5%(522)が最前線の医療従事者)の調査で、抑うつ(50.4%(634))、不安(44.6%(560))、不眠(34.0%(427))が認められた。これら全ての症状について、看護師、女性、最前線、武漢が、それぞれ、他の医療従事者より有意に高く認められた 。医療関係者のコロナうつ、世界的に広がっているようです。もちろん、他の「近距離で人と触れ合わないといけない」職種全般にもいえるとは思います。

◎1月28日から3月13日までにワシントン州キング・カウンティのSARS-CoV-2陽性が確認された医療従事者48人の調査では、77.1%(37/48)が女性で、77.1%(37/48)が直接の患者ケア、残りは行政補助や、環境サービスや管理の従事者だった。50.0%(24/48)が長期ケア施設で、27.1%(13/48)が外来患者の診療所で、12.6%(6/48)が急性期病院で、3人は1つ以上の関係機関で働いていた。最も多い初発症状は咳(50.0%,24/48)、発熱(41.7%,20/48)、筋肉痛(35.4%,17/48)だった。16.7%(8/48)の医療従事者は発症時、発熱,咳,息切れ,喉の痛みが無かった。これらの中で最も多かったのは悪寒、筋肉痛、鼻炎、不快感だった。1人は、疾病経過中全く熱,咳,息切れ,喉の痛みの症状が無く、症状は鼻炎と不快感だけだった。他の7人では、発病から現在のCOVID-19のスクリーニングのために用いられている症状発現までの期間の中央値は2日(1-7日)だった。仮に筋肉痛と悪寒がスクリーニングのクライテリアに入っていたならば、医療従事者での症例検出率は、83.3%(40/48)から89.6%(43/48)に改善した。64.4%(31/48)が、何らかの症状が有りながら中央値2日(1-10日)働いていた 。主に日本では発熱のみにfocusが絞られているが、咳などの気道症状、倦怠感や筋肉痛、つまり「なんとなく体調が悪い」場合に、休める場合は休むことを考えないといけない。

☆イギリスのニューカッスルのNHSで実施された呼吸器症状のある医療従事者のスクリーニング検査では、1654人に対して行われた1666回の検査で、240回(14%)がSARS-CoV-2陽性だった。陽性者と陰性者に年齢差は無かった。12人は、症状が再発したために繰り返し検査を行ったが、1人で14日後に行った2回目で陽性だった。①直接患者に接触する医療従事者(医師,看護師等)、②直接患者に接しないが、感染リスクの高い医療従事者(検査室の職員等)、③非臨床職員(事務職員,秘書等)に分けた場合、がスクリーニング対象者の81%(834/1029)が①、8%(86)が②、11%(109)が③だった。SARS-CoV-2陽性率は、①②③で差は無かった 。[医療従事者の感染の多くは、患者と接して起こっているわけではない。直接飛沫を浴びる「飛沫感染」が一番危険であるというイメージがあるが、モノを通じて(手から手へ)、また空気中のエアロゾルなどが感染に関与している可能性があるということ。

(8)疫学

☆☆米国におけるコロナウイルスOC43とHKU1の流行の季節変動、免疫、交差免疫データを用いたSARS-CoV-2の流行のモデルを用いた推計では、最初の最も大きなパンデミックに続いて、冬季の再興が起こると予測された。他の介入方法が無い以上、social dintancingの成功は集中治療のCapacityを超えるか否かで、これを避けるためには、2022年まで長期に渡る、または間歇的なsocial distancingが必要となる。拡大した集中治療のCapacityや有効な治療法は、social distancingの効果を高め、集団免疫の獲得を早める。SARS-CoV-2に対する免疫の広がりと長さを決定するために継続的な抗体検査が至急必要である。明らかな発症例が無くなったとしても、感染再興の可能性は2024年まであるため、SARS-CoV-2のsurveillanceは続ける必要がある 。[論文の推計では、social distancingでは誰にも免疫が出来ないため、20週のsocial distancingで基本再生産数を60%削減した場合、再興時のピークは、感染抑制が無い場合と同様に高くなる。ピーク時の患者数を最も抑えるのは、social distancingの強さと長さの調整により、間欠的なsocial distancingの間にある期間毎に、ほぼ均等に発症患者数を割り振ることである。また、季節変動を考慮すると、介入を行った後の流行再興時のピークと感染者数は、何も介入を行わなかった場合よりも大きくなり得る。強いsocial distancingは免疫の無い人を高率に保つため、晩秋から冬季に基本再生産数が上昇して再興が起こった場合、強度の感染を引き起こす。抗体検査が今アメリカで急速になされていますが、これは必ずしも「個人が感染した過去がある」ということを調べたい、ということではなく、統計的なデータを取って、社会全体でウイルスを抑え込もうとする意味があります。また、他で書かれていたように、抗体がある=もう感染しない、なんて単純な問題ではない。

☆中国のCOVIOD-19 報告例と移動データ、メタ人口モデルとベイズ推計を用いた研究では、1月23日の旅行禁止以前の86%(95%CI:82-90)の感染は報告されていないと推計された。一人当たりの推計では、報告されていない感染の感染率は報告されている感染の55%(46%-62%)であるが、母集団が大きいため、報告されていない感染は、報告例の79%の感染源であった 。[SARS-CoV-2の地理的拡大の速さと、ウイルスの封じ込めの難しさを裏付けている。]

☆☆メタ人口疾患感染モデルを用いた旅行抑制の効果の研究では、1月23日の武漢の旅行禁止は、中国全体の感染の進行を3~5日遅らせただけだったが、顕著な効果は海外で起こっていて、2月中旬までの患者の流入を80%近く低減させた。また中国本土との90%の持続的な渡航制限は、50%以上の感染性制御に成功しない限り、感染にほとんど影響を与えなかった

☆☆北京、上海、深圳、温州、その他COVID-19確定者の多かった10の中国の地域では、瞬間再生産数は、感染抑制政策が執られた1月23日以来低下し、1以下のままだった。31の湖北州外の地域の死亡率は0.98%(95%CI:0.82-1.16)で、湖北州の5.91%(95%CI:5.73-6.09)の約5倍低かった。感受性者―感染者―回復者のモデルを用いた推計では、感染規模が小さい間の介入の緩和は(瞬時再生産数>1)、たとえ積極的な再介入が疾患の流行を元のレベルに戻せるとしても、累積症例数を緩和の長さを係数として指数関数的に増加させると考えられた

☆深圳の1月14日から2月12日まで391人のCOVID-19患者と1286人の濃厚接触者を調査した研究では、感染者が隔離されたのは、発症から平均4.6日(95%CI:4.1-5.0)だった。濃厚接触者の追跡調査は、1.9日(95%CI:1.1-2.7)分短縮した。家庭内接触者と旅行同行者は、他の濃厚接触者よりも高い感染リスクがあった(オッズ比6.27[95%CI:1.49-26.33];7.06[1.43-34.91])。家庭内の2次感染率は11.2%(95%CI:9.1-13.8)で、子供も大人と同様に感染していた(10歳以下の子供:7.4%,全体6.6%)。観察された再生産数は0.4(95CI:0.3-0.5)で、平均の発症間隔(serial interval)は6.3日(95CI:5.2-7.6)だった 。

☆☆武漢の感染を、①何の介入も無かった時期(12月8日~1月9日)、②春節で多くの人の移動のあった時期(1月10日~22日)、③交通制限と自宅での隔離(1月23日~2月1日)、④中央での隔離と治療(2月2日~16日)、⑤広範な症状調査(2月17日~3月8日)の5期について分析した研究では、毎日確認される確定症例数は、第3期をピークに地理的な場所・性別・年齢の違いに関わりなく減少したが、子供と青年では増加した。全期にわたる毎日の確定例の割合は、医療従事者において、一般人より高かった(130.5/100万[95%CI:123.9-137.2]対41.5/100万[95%CI:41.0-41.9])。重症・危篤例の割合は、5期にかけて、53.1%から10.3%に減少した。重症の危険性は年齢とともに上昇した。20-39歳の重症・危篤例は12.1%であったが、80歳以上の高齢者では41.3%で(リスク比3.16[95%CI:3.31-3.95])、20歳未満では4.1%(リスク比0.47[95%CI:0.31-0.70])。1月26日以前の実効再生産数は3.0以上で変動していたが、2月6日以後は1.0以下となり、3月1日以後は0.3以下になった 。例えば「感染者数」という指標で調べると、個々の重症度はあまり顧みられていない。ウイルスの量を減らすということを一義に考えると、(それぞれのウイルスをうつしあったりする可能性を考えても)social distanceをある期間とることには、一定の意味があると個人的には考える。

◎イタリアの研究者は、COVID-19感染のモデル作りについて、診断された感染者と未診断の感染者を区別する重要性を指摘し(診断された感染者は、典型的には隔離され感染を起こす可能性が減るため)、その区別に基づくモデルを作成した。このモデルによれば、Social distancingによる抑制は、広範囲な感染の検査と感染者の追跡とを組み合わせることが、COVID-19を終息させるために必要と考えられた 。

◎症例報告と人の動きと公衆衛生的介入等を含むデータを用いた、武漢の遮断の最初の50日の効果の研究では、武漢の遮断は、他の都市へのCOVOD-19の到達を2.91日(95%CI:2.54-3.29)遅らせていた。先制的な感染抑制手段を採った都市は、後に感染抑制を開始した都市よりも、最初の1週間の平均症例数は有意に少なかった(13.0[7.1-18.8]対20.6[14.5-26.8])。市内の公共交通の停止や商店の閉鎖、会合の禁止などは、症例数の減少と相関していた。国家の緊急対応は、2月19日までの最初の50日は、COVID-19感染症の大きさを抑え、かなりの発症数を抑えた 。

◎武漢のリアルタイム移動データと旅行歴を含む症例の詳細なデータを用いて、中国全体の都市の感染について患者の移入が果たす役割を解明し、感染抑制策の影響を確認する研究では、初めは、中国のCVID-19症例の中国での空間的な分布は、人の動きで良好に説明可能だった。感染抑制策実施後は、報告例の統計は武漢外の局地的な感染の連鎖を示していたが、人の動きと症例の関係が減少し、ほとんどの場所で症例数の伸び率はマイナスになった。中国で実施された根本的感染抑制策は、実質的にCOVID-19の感染拡大を抑えた 。

○北大の2月28日におけるCOVID-19確定例における、報告例の年齢と重症化率の非均一性から構成した統計モデルを用いた検討では、確認されている非重症例の割合は0.44(95%CI:0.37-0.50)で、報告例を上回る数の未確認の非重症例があると推計された 。[本論文は査読前のpreprintである。]無症状の感染者がかなりの数居るくらいだから、未確認の非重症例が多数いても全く不思議はない。

◎COVID-19のSARS-2-CoV-2陽性の無症候者の割合を知るために、武漢から退避したチャーター機の日本人を調査した北大の研究では、全退避者(565人)の内、11.2%(63)が症状有と考えられた。PCR検査では、5人の無症状者と7人の有症状者がCOVID-19陽性だった。ベイズ理論により、PCR検査陽性の無症候者の割合は41.6%(95%CI:16.7-66.7)と計算された 。[本論文は査読前のpreprintである。][武漢を出発して14日間(潜伏期の95%信頼区間より長い)経過しているが、もし、無症状者の1人が後日発症するとすれば、33.3%(95%CI:8.3-58.3)となる。]武漢からの帰国者というかなりhigh riskの人の調査とはいえ、無症候者でもウイルスを持っていないということが全く言えない、ということが分かる。

(続く)

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神奈川県藤沢市で「藤沢在宅クリニック」を開いています。 患者さんのお宅や施設に訪問して診療する、在宅医です。 YouTubeで健康チャンネルを不定期配信しています。 「在宅医が語る!健康チャンネル」 https://www.youtube.com/channel/UC9YxLfSunPnVClEMW04Jeuw ☆著作「在宅医の告白~多死社会のリアル~」(2018.2.26 幻冬舎MC)